誰かのためではなく、自分のために「望む」。筆先で整える、私だけのしあわせの軸

筆文字「望」。背景には、青紫のアイリスの花。

春の風が日ごとに柔らかさを帯び、新しい季節の気配に心浮き立つ3月の終わり。

家族のため、仕事のため、大切な誰かのため。

私たちは気づかないうちに、誰かの期待(望み)に応えようと、心の中でずっと爪先立ちを続けているのかもしれません。

本当の自分の願いはどこにあるのか、わからなくなってしまうほど一生懸命なあなたへ。

今日は、そんなあなたの肩の力をふっと抜いてくれる「望」という一文字のお話です。

漢字の成り立ちや、筆文字の書き方を通じて、自分を一番に大切にするための「しあわせの循環」を、私自身の気づきと一緒にお裾分けしますね。

目次

爪先立ち」の先に見えるもの

「望」の字の原型(甲骨文字)の表記。背景には、背伸びをしている女性。

〈出典:伏見沖敬編『書道字典』角川学芸出版〉

」という漢字をじっと見つめてみてください。 この字のルーツを辿ると、数千年前の甲骨文字(こうこつもじ)に突き当たります。

そこには、盛り土のような高い場所に立ち、異常に大きな「目」を見開いて、爪先立ちで遠くを凝視する人の姿が描かれています。


身体を極限まで引き伸ばして、視界の限界を超えた先にある何かを捉えようとする、能動的な意志。 それが「のぞむ」という行為の始まりでした。

私たちは、ずっと遠くの「しあわせを、一生懸命に背伸びして探してきたのかもしれません。

でも、その爪先立ち、少しだけ疲れてはいませんか?



『遠くを見る』ことは素晴らしいけれど、まずはしっかりと地面を踏みしめることが、自分らしい未来を『望む』第一歩になるんですよね。

他人の望みをかなえることは、本当の「愛」?

満たされてこそ、愛は自然に広がっていく。背景には水の輪が広がる様子。

私たちは、周りの人の「望み」を叶えることに喜びを感じます。

でも、もしそれが「嫌われたくないから」「そうしないと嫌なことをされるかもしれないから」という不安からくるものだとしたら……。

他人の望みをかなえようとする気持ちは、果たして愛なのか?



以前の私は、誰かの期待に応えることこそが自分の価値だと思っていました。

でも、自分を後回しにして爪先立ちを続けていると、心はいつの間にかカラカラに乾いてしまいます。

本当に自分を大事にできるのは、自分しかいません。

まずは自分が幸せな気持ちで満たされること。

その余裕があってこそ、温かな気持ちは周りへと自然に広がっていくのだと、今は感じています。

筆先で整える、私だけの「しあわせの軸」

筆文字「望」の書き方のヒント。それぞれのバランス、「王」の三本線の違い。

左側下〈出典:伏見沖敬編『書道字典』角川学芸出版〉

ふだんよく見かける「望」とは違い、下部にある「王(𡈼の変化形)」のパーツが少し右へ位置する書き方になります。

  • 「亡」と「月」と「王」の絶妙なバランス

    「月」をやや傾けて、コンパクトに。
    「王」が入る余白がつくる。


  • 下部の「王」は中心線よりやや右よりに配置

    迷いない縦の線が書けたとき、心の軸が整うような心地よさが生まれます。


  • 「王」の横画は、優雅にバランスをとりながら

    三本の横画は、それぞれ違う表情をもっています。

    特に最後の一画は、弓なりに力強い線(仰勢:ぎょうせい)で締めくくります。

上部の「」や「」は、この「」という土台にどっしりと支えられることで、初めて伸びやかなバランスを保つことができます 。

満月の夜、自分を「満たす」ひとときを

足りないと感じる今はm次への準備期間。背景には大きな満月が輝いている。

「望」という字には、もうひとつ「満月(望月・もちづき)」という意味があります。

太陽と月が地球を挟んで正反対に位置し、地上から月が最も輝かしく見える情景です。

平安貴族の藤原道長が「欠けたることも無しと思へば」と詠んだように、満月は完璧な均衡と幸福を象徴してきました。

でも、毎日の暮らしの中で、私たちの心は満ちたり欠けたりするのが当たり前です。

もし、今あなたが「何かが足りない」と感じているなら、それは次の満月に向けて新しい望み」を蓄えている最中なのかもしれません。

「希望」という青いバラ かつては不可能の代名詞だった「青いバラ」。

しかし、科学者たちの執念(望み)が結実し、今では「夢かなう」という花言葉を持つようになりました。

あなたの内側にある小さな「望み」も、いつか必ず美しい花を咲かせるための大切な種なのです。

まとめ:ここだけは持ち帰って!

筆文字「望」の作品はがき。青色のアネモネとともに。
自分を大切にする「望み」のヒント
  • 「爪先立ち」をお休みする

    誰かの期待に応えようと背伸びする手を一度おろして、今の自分のまま、深く深呼吸をしてみましょう。

  • 「満ちる」ときを待つ

    」の字にある「月」のように、人生にはサイクルがあります。今が欠けているように感じても、それは次の豊かさへの準備期間です。

「あなたがあなた自身の味方になって、その心を幸せで満たしてあげましょう。」

なぞり書きシートを制作中です

現在、凛とした「軸」を整え、心をふんわりと広げるための「望」のなぞり書きシートを、心を込めて制作しております。

完成しましたらこちらでお披露目しますので、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

わたぼうし
筆耕士
「ゆるく、楽しく、頑張らない」がモットー。自身の経験から、正しさよりも「心地よさ」の中で生まれる生きた文字を大切にしています。 さとう式リンパケアで身体を整えつつ、小筆や筆ペン作品を制作。小筆や筆ペンで綴る作品などはminneのショップで販売中です。
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