疲れや焦りを感じたら、思い出して。「ゆっくり」を筆で書く、心を整える時間

筆文字「ゆっくり」。芽吹きを迎えた春の様子。

急いでいるわけじゃないのに、なんだか焦っている。


体も心もなんとなくざわざわして、「ゆっくりしたいな~」とふと思う。


疲れているときほど、そのひと言が頭をよぎりますよね。


今日はその「ゆっくり」という四文字を、いっしょに書いてみませんか。


書くこと自体が、もう「ゆっくり」のはじまりです。

目次

「ゆっくり」は、緩む、という意味から生まれた

ゆっくりの語源は「ゆくる」。ゆっくり糸がほどけていく様子。

「ゆっくり」という言葉の語源を辿ると、「ゆくる(緩る)」という古い動詞にたどり着きます。

「ゆくる」は、現代語の「ゆるむ」と同じ根を持つ言葉。


ぴんと張り詰めた糸が、ふっとほどける状態を指すのだそうです。


ゆるめる」と「ゆっくり」が、もともと同じところから来ている。


急がないこと、ゆとりを持つこと、心が落ち着いていること。


「ゆっくり」という言葉には、最初から心の平穏が込められているんですね。

江戸時代の人は、時間にゆるかった

昔の時間はやさしかった。背景に、日本の畳の部屋。

少しおもしろい話をひとつ。


江戸時代の日本人は、わたしたちとまったく違う時間の感覚で生きていました。


季節によって「一刻」の長さが変わる「不定時法」という制度で、夏は昼が長く、冬は夜が長い。


待ち合わせに数十分ずれても、それが当たり前だったのだそうです。


それが大きく変わったのは、明治になって鉄道が走りはじめてから。


分刻みのスケジュールが必要になり、日本人はそこから「時間に正確な民族」になっていったといわれています。


つまり、わたしたちが感じる「焦り」や「遅れへの不安」は、150年ほどの歴史しかない。

もともとの日本人は、もっとずっとゆっくりとした時間の中を生きていたんですね!

わたしにとっての「ゆっくり」

自分の速さで。背景は部屋の中、机の上にはノート。

疲れや焦りを感じているとき、わたしが一番ほしいのは、好きなことをマイペースにできる時間です。


誰かのペースに合わせなくていい。
結果を急がなくていい。
ただ、自分の好きなことを、自分の速さで。

筆を持つ時間も、わたしにとってそういう時間のひとつです。


うまく書こうとしなければ、筆を走らせることはこんなに自由で、こんなに静かです。


あえて「ゆっくり書くことに集中してみる


いつもより柔らかく、ゆったりした文字を楽しむのもいいですね。

筆文字で書く「ゆっくり」のコツ

筆文字「ゆっくり」の書き方のヒント。余白を意識す。優しく入筆する。


「ゆっくり」の雰囲気に合わせて、余白たっぷりに。

「ゆ」は、ふんわり膨らませるように

打ち込みをせず、力を抜いてそっと入るのがポイント。

「っ」は、小さく・軽やかに

他の文字より小さいですが、めりはりをつけてリズムを出します。


「く」は、なだらかに曲がる

一画のシンプルな文字ですが、折れ曲がる角度を鋭くしすぎないように。
なだらかに曲がるほど、言葉の雰囲気に合います。

「り」は、間を意識して

一画目と二画目のあいだに十分な「間」を意識して。
最後まで丁寧に。

【書く前にひとつだけ】
筆を3本の指でそっとつまみ、手のひらに卵ひとつ分の空間を。
書き始める前に、一度深く息を吐いて。
その呼吸のままの速さで、ゆっくり書きはじめてください。

万年青(オモト)のように、ゆっくりと

緑の立派な葉を持つ直物「おもと」のアップ。

「ゆっくりとした成長」を体現する植物に、万年青(オモト)があります。


一年中緑の葉を茂らせ、何年もかけて着実に育っていく。

派手な変化はないけれど、止まることなく続いていく。

徳川家康が江戸城に入るとき、この植物を携えたという話が残っています。


長寿と繁栄の象徴として、長く愛されてきた植物です。


目に見える変化がなくても、確かに育っている。


わたしたちも、ゆっくりな日があっていい。

ゆっくりな時間こそが、根を張る力になるのかもしれません。

今日の一筆

和紙と墨をたっぷり含ませた筆のアップ。

ゆっくり」という四文字を、今日ゆっくり書いてみてください。


焦らなくていい。
うまく書けなくていい。
ただ、自分のペースで、自分のために。


書き終わったら、ひとつ深呼吸。
それがもう、今日の「ゆっくり」です。

緊張した糸をほどくように。
ゆっくりは、もともとそういう意味だったから。

なぞり書きシートを制作中です

現在、この「ゆっくり」という言葉を、ゆっくりとなぞりながら心をほどいていただくための「なぞり書きシート」を、心を込めて制作しております。


完成しましたら、またこちらでお知らせしますね。

あなたの「ゆっくり」な時間に、そっと寄り添えるものになりますように。

わたぼうし
筆耕士
「ゆるく、楽しく、頑張らない」がモットー。自身の経験から、正しさよりも「心地よさ」の中で生まれる生きた文字を大切にしています。 さとう式リンパケアで身体を整えつつ、小筆や筆ペン作品を制作。小筆や筆ペンで綴る作品などはminneのショップで販売中です。
目次