「まま」は真実という意味だった。「そのままでいい」七文字に込められた、自分への贈りもの

筆文字「だいじょうぶ」。白く可憐な花とともに。

そのままでいい

この七文字、自分に向けてすんなり言えますか。

わたしはまだ、なかなか難しい。
言いたい気持ちはあるのに、もっと違う何かを求めてしまう。

それでも、ふと気づく瞬間があります。

無理していない。
背伸びしていない。
ただ、自分らしくいる。

そういうとき、この言葉が静かに胸に落ちてきます。

そのままでいい、って。

目次

「まま」という言葉に隠された、純粋な真実

そのままでいい」という響きが、なぜこれほど胸に届くのでしょうか。
その秘密は、言葉の成り立ちの中に隠れています。

葉っぱからしずくが落ちる瞬間のアップ。

まま」の語源を辿ると、「真(ま)」、つまり純粋であること、真実であることという意味に行き着きます。


まま」とはもともと、何の手も加えられていない「純粋な真実の状態」を指す言葉だったのです。


この七文字を分解してみると、まるで一つの物語のような構造が見えてきます。

その
遠くにある理想ではなく、今、目の前にある現実をやさしく指し示す。


まま
加工も装飾もしていない、あなたの「真」の状態をそのまま肯定する。



無理に変わろうとする動きをそっと制止する。

靴を脱ごうとするお客様に、
そのままで(お入りください)」と言うときのように、今の状態を保つための静止の力を持っている。



いい」は、単なる評価ではなく、「これ以上、何も足さなくていい」という満たされた境地を伝えている。

今のあなたの真実は、それだけで十分です。無理に動こうとしなくていいのですよ」

と、肩にそっと置かれた温かな手のひらのような言葉なんですね。

「ありのまま」「あるがまま」とは、どう違う?

似ているようで、少しずつ色合いが違う言葉たち。

「ありのまま」「あるがまま」「そのまま」の簡単な説明。

ありのまま
内面の本質に目を向け、偽りのない本来の自分を見せること。

あるがまま
変えられない運命や環境を、静かに受け入れること。


それらに対して「そのままでいい」が持つ最大の特徴は、「時間の静止」です。


過去から続く今この状態を、未来へ向けてあえて変えずに維持するという、静かで力強い意志。

そのままでいい」は、流されているのではなく、ここに留まることを選んでいる言葉なのです。


三つの中で、いちばん「」を抱きしめている言葉。

「変わらなくていい」ではなく、「ここから始められる」

そっと包み込むようにした両手の中に、一輪の花が咲いている。

心理学者のカール・ロジャーズが残した言葉があります。

人は、自分自身を無条件で受け入れられたとき、はじめて変わることができる

そのままでいい

自分をそのまま受け入れることが、むしろ変化のスタート地点になる。

力んでいるとき、なぜかうまくいかない。
力を抜いて今の自分をそっと認めたとき、するりと動き出せることがある。

筆を持つときと、似ているかもしれません。
力みすぎると線が固くなる。

ゆっくり、そのままの自分の手で書いたとき、文字が生きてくる。

そのままでいい」と思えた瞬間、不思議とすっと前に進める。
自分を認めることが、いちばんの近道なのかもしれませんね。

相田みつをさんの、あの書

墨で描いた筆文字のアップ。

そのままでいいがな」という言葉を書いた人がいます。
書家の、相田みつをさんです。

22歳で全国的な書道展で1位を取るほどの実力を持ちながら、あえて「飾らない書体」へと向かっていきました。

綺麗に書こうとするのではなく、自分の弱さや恥、感情をそのまま紙にぶつける。
それが見る人の魂に届く、と。

うまく書けなくていい。
震えても、歪んでも、それがあなたの文字。
書の世界も「そのままでいい」を教えてくれています。

筆文字で書く「そのままでいい」のコツ

筆文字「そのままでいい」の書き方のヒント。の、でを控えめに。「そのままで」と「いい」の間に余白を。

七文字すべてひらがな。単調になりやすい分、文字の大小でリズムをつくるのがポイントです。

全体のリズムを余白でつくる

そのままで」と「いい」の間は余白たっぷりに。ゆったりしたリズムができます。

控えめに書く文字「の」「で」

」は少し小さめに、懐を広く丸く書くと、やさしい印象になります。

」の濁点は右上の離れた位置に打つと、空間に広がりが生まれます。

【手が震えてしまったら】
2〜3秒息を止めてから、「トン、シューッ」というリズムで一気に書いてみてください。
それでも震えたなら、「味がある」と面白がる余裕を。
震えた線も、そのままでいい。

自分にしかできない形を活かす

「ありのすだま」の植物。

アリノスダマ」というユニークな植物がいます。

東南アジアに育つこの植物は、茎の中に「迷路状の空間」を持っています。

自らの形を変えて外敵を拒むのではなく、その不思議な形を活かしてアリに住処を提供し、共生関係を築くことで栄養を得ています。

多様性を受け入れ、自分にしかできない形をそのまま活かす知恵の象徴です。

今日の一筆

一輪の紫色のかわいい花をそっと手に持つ。

そのままでいい」という七文字を、今日ゆっくり書いてみてください。

誰かに見せなくていい。
上手に書けなくていい。
自分らしく、自分のために。

書き終わったら、その文字を眺めて、自分に言ってあげてください。

そのままでいい、って。

「まま」は、真実という意味だった。
だからこの七文字は、あなたの真実を肯定する言葉です。

なぞり書きシートを制作中です

現在、この「そのままでいい」という言葉を、ゆっくりとなぞりながら心をほどいていただくための「なぞり書きシート」を、心を込めて制作しております。

完成しましたら、またこちらでお知らせしますね。
あなたの「そのままでいい」な時間に、そっと寄り添えるものになりますように。

わたぼうし
筆耕士
「ゆるく、楽しく、頑張らない」がモットー。自身の経験から、正しさよりも「心地よさ」の中で生まれる生きた文字を大切にしています。 さとう式リンパケアで身体を整えつつ、小筆や筆ペン作品を制作。小筆や筆ペンで綴る作品などはminneのショップで販売中です。
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