はじまりの、一。複雑な毎日をシンプルにする、余白の整え方。

和紙のようなざらっとした紙に、筆文字で「一」と書かれている

何もしない贅沢を。真っ白な紙に向き合い、思考を整理する習慣


筆を持って、真っ白な紙に向かうとき。 そこには、少しの緊張感と、これから何かが始まる嬉しさが入り混じっています。

このブログ「癒しと、筆文字」を始めようと決めてから、最初の一歩をどう踏み出すか、ずっと考えていました。

立派なことを書かなきゃいけない気がして、何度も筆を持っては置いて……。

そんなとき、ふと頭に浮かんだのが「一(いち)」という文字でした。

シンプルで、誰でも知っている。けれど、今の私たちが最も必要としている「静寂」が、この一本の線には詰まっている気がしたのです。

今日は、そんな「一」という文字を通じて、日常の余白を整えるお話をさせてください。

目次

心をほどく、最初の一画

アップで「一」と筆文字で書かれている。ざらっとした厚手の紙。

「一」 たった一本の線。でも、この線には不思議な力があります。

以前の私は、毎日たくさんの「やるべきこと」に追われていました。何かをしなくては、何者かにならなくては、と。

でも、そんな焦燥感の中で、自分が本当はどう感じているのか、何をしたいのかが逆に分からなくなっていったのです。

そんなある日、何気なく「一」を書いてみました。 深く考えず、ただ筆を持って、白い紙に一本の線を引いただけ。

でも、その瞬間、ふっと肩の力が抜けたんです。

複雑に絡まった思考が、ほどけていくような感覚。 頑張りすぎた心が、やさしく休まるような感覚。

「一」を書いたとき、わたしは「一人の自分」に還りました。誰のためでもない、ただの私として呼吸をする。

あの日から、この一本の線は私にとっての大切な「お守り」になりました。

『正しい』を卒業して、『心地よい』へ

和室の机の上にお茶。そこで書かれた筆文字の「一」。横には休息のお茶。

私はかつて、書道のプロとして「正解」を追い求めてきました。

手本通りに書くこと。 再現性を高めること。 評価されるために、完璧を目指すこと。

毎日、何時間も練習して、一画一画を完璧にしようとしていました。 少しでもズレたら、書き直す。 手本と違ったら、また最初から。

それは確かに「上達」にはつながったけれど、いつしか書くことが苦しくなっていたんです。

でも、ある時期から体調を崩して、思うように筆が持てなくなりました。

震える手で書いた文字は、手本とはほど遠いもの。

最初は悔しくて、情けなくて。

でも、その「不完全な文字」をじっと見ているうちに、気づいたんです。 この震えも、この滲みも、今の私の一部なんだって。

それから、私が大切にしているのは「生きた文字」になりました。

今の自分をジャッジしない

今日の「一」は、少し震えているかもしれない。
その時々の揺らぎや、滲み。 二度と再現できないノイズ。

それは欠点ではなく、今日一日を懸命に生きた証拠なんです。


今朝書いた「一」と、夕方書く「一」は違います。 昨日の「一」と、今日の「一」も違います。
わたしが今書く「一」は、今この瞬間にしか生まれない、愛おしい形なのです。

完璧を目指す疲れから自由になり、今の状態をただ観察する。
それだけで、心は驚くほど軽くなりました。

私は今、自分の書く文字が好きです。 もちろん、嫌いな時もたくさんあります。
でも、それはすべて自分の中を表すものだから、結局愛おしいんです。

一本の線が教えてくれること

静寂、禅の庭のようなイメージ。枯山水のような白い砂の上にの黒い玉石の構図。

忙しい毎日の中で、「休息」って何だろうと考えることがあります。
何もしないこと? それも大切ですね。

でも、意図的な集中もまた、脳の休息になるんです。

脳を休めるスイッチ

頭の中がザワザワして眠れないとき試してみたことがあったんです。

空中に「一」を書く。

(ここからイメージの世界です)

筆を持つ。(人さし指でもいいですね)
深呼吸をする。
腕の力をふっと抜く。
筆の重みを紙に預ける。
ゆっくり筆(指)を動して「一」と、書く。



筆先がスーッと紙を上を走りだすのを感じます。

すると、その数秒間、世界が静止したような「凪(なぎ)」の感覚がありました。

短時間の瞑想」とでもいうのでしょうか。。
紙と筆がなくても、目を閉じて心に描くだけで、不思議と気持ちが落ち着くのを感じました。

余白の豊かさ

「一」という文字の周りには、広大な余白があります。 かつての私は、この余白を「埋めなければならないもの」として恐れていました。

予定を詰め込み、知識を詰め込み、自分を隙間なく埋めることで安心しようとしていたのです。

けれど、文字を美しく見せるのは、線の太さではなく「余白の美しさ」です。 人生も同じかもしれません。

何もしない時間。
ぼんやり過ごす時間。
何も生み出さない時間。

あえて何も入れない、何もしない贅沢を自分に許す。その余白こそが、次に進むための新しいエネルギーを育んでくれます。

あなたにとっての『一』は?

筆と硯と開かれたノート。何度も練習した後が伺える紙。

もし、今の心の状態を線一本で表すとしたら、どんな線になるでしょうか?

まっすぐな線?
少し揺れている線?
力強い線?
それとも、儚げな線?



どんな線でも、それが「今のあなた」です。 そこに正解も不正解もありません。

おわりに

今日の一文字は、「はじまりの、一」

なんだかかっこいいタイトルになってしまったけれど、素直な「一」が書けました。

このブログも、完璧を目指すのではなく、その時々の私を素直に表現していけたらいいなと思っています。

揺らいだり、迷ったり、そんな姿も含めて。

完璧じゃなくていい。揺れていてもいい。今のままで、いいんです。

もしよかったら、今日の終わりに、そっと「一」を描いてみてください。 心の中でも、空中に指で、でも。

その一本の線が、明日のあなたをそっと支えてくれるかもしれません。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。 また次の文字で、お会いしましょう。

わたぼうし
筆耕士
「ゆるく、楽しく、頑張らない」がモットー。自身の経験から、正しさよりも「心地よさ」の中で生まれる生きた文字を大切にしています。 さとう式リンパケアで身体を整えつつ、小筆や筆ペン作品を制作。小筆や筆ペンで綴る作品などはminneのショップで販売中です。
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